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【特集】プラチナはレンジ上限を試す、供給不足見通しが支援 <コモディティ特集>

MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行
 プラチナ(白金)の現物相場は、900ドル前後で下げ止まると、買い戻されたことに加え、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ観測が戻ったことを受けて地合いを引き締めた。また、英ジョンソン・マッセイ(JM)やワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)が相次いで供給不足見通しを示したことも支援要因となり、15日のアジア時間午前の取引で1050ドル台まで上昇し、昨年5月以来の高値をつけた。15日に4月の米消費者物価指数(CPI)の発表があり、1000ドル台で定着できるかどうかが当面の焦点である。

 3月の米消費者物価指数(CPI)の伸びが予想以上に加速したことや、パウエル米FRB議長が長期間の金利据え置きを示唆したことを受けて利下げ観測が後退した。米4月CPIは前年比3.5%上昇と前月の3.2%上昇から伸びが加速し、昨年9月以来の大幅な伸びとなった(事前予想は3.4%上昇)。CMEのフェドウォッチでは、米FRBの利下げ開始は9月以降となり、年1回の利下げが見込まれた。ただ、4月の米雇用統計が予想を下回り労働市場の減速が示唆されると、利下げ観測が戻り、年2回の利下げを織り込んだ。

 非農業部門雇用者数は前月比17万5000人増と事前予想の24万3000人増を下回った。31万5000人増に上方改定された前月から予想以上に伸びが鈍化した。失業率は3.8%から3.9%に上昇した。目先は今夜発表される4月の米CPIが焦点である。事前予想は前年比3.4%上昇と前月の3.5%上昇から伸びが鈍化するとみられている。ただ、目標とする2%を大幅に上回っており、米CPI発表後の各市場の反応を確認したい。

●プラチナは2年連続の供給不足見通し

 英JMのレポートによると、2024年のプラチナ系貴金属(PGM)は供給不足が続く見通しである。プラチナは18.6トン(前年16.1トン)、パラジウムは11.1トン(同31.7トン)、ロジウムは2.0トン(同4.0トン)の供給不足と予想された。プラチナは過去10年間で最大の供給不足となる見通しである。鉱山生産は2%減少すると予想された。ロシアの供給が2023年の大量の在庫放出から通常の水準に戻り、南アフリカの供給も減少するとみられる。一方、需要はディーゼル車の生産減少で自動車触媒向けが減少すると予想されたが、工業用需要は堅調で投資需要も増加するとみられている。

 また、WPICの四半期報告でも供給不足見通しが示された。第1四半期の世界のプラチナ需要は自動車セクターの需要が堅調に成長したことに加え、宝飾品需要が上向いたため、前四半期比で増加し、62トンとなった。一方、総供給量は鉱山供給やリサイクル供給の低迷が続き、統計開始以来2番目に低い水準である51トンに落ち込んだ。その結果、11トンの供給不足となった。2024年は供給が221トン、需要は236トンとなり、15トンの供給不足が見込まれている。トレバー・レイモンドCEOは、2025年にかけて供給に下方リスクがあることを指摘した。鉱山においては、PGMのバスケット価格の大幅な下落が鉱山の採算に与える悪影響を抑えるために、生産計画の見直しや操業の再編が検討されているという。需要面では水素経済におけるプラチナの役割が本格化しつつあり、需要が有意なレベルまで大幅に増加する兆しがあるとした。需給が引き締まるようなら、米FRBの利下げ開始とともにプラチナ価格はさらに上昇する可能性が出てくる。

●NY市場で大口投機家はレンジ下限で新規買い、買い戻し

 プラチナETF(上場投信)残高は13日の米国で32.39トン(3月末31.56トン)、9日の英国で18.11トン(同12.70トン)、10日の南アフリカで11.43トン(同11.67トン)となった。英国で投資資金流入が目立った。

 一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、5月7日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは1万3660枚(前週6797枚)に拡大した。前週は3月19日以来の低水準となったが、レンジ下限で新規買い、買い戻しが入った。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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